教育ログReflection Diary

Dual Process Theory(1)

今回は臨床推論についてお話します。

臨床推論というと「ドクターG」や「Dr.Hause」などのレアな病気をどう診断していくかについてイメージする方も多いと思います。もちろん、その能力も総合診療医として非常に重要なのですが、それだけが臨床推論ではありません。日本プライマリ・ケア連合学会の研修ハンドブックには以下のように目標が記載されています。

  • タイプ1, タイプ2のdual process思考を意識し, 双方の思考過程を磨
    いて診断推論力を高める.

Dual Process 思考(Dual Process Theory)というのは、認知心理学からきている理論です。人間は2つの思考プロセスがあるといわれており、以下にそれぞれの特徴を示します(表1)。

Type 1 Type 2
  • 直観的, 近道思考(ヒューリスティックス)
  • 自動的, 無意識的
  • 迅速, 労力がかからない
  • 信頼性は低く, 不安定
  • エラーが起きやすい
  • 背景に強く影響を受ける
  • 感情移入しやすい
  • 科学的な厳密さに乏しい
  • 分析的, 体系的
  • 意図的, 意識的
  • ゆっくり, 労力を要する
  • 信頼性は高く, 一貫している
  • エラーが起きにくい
  • 背景にはほとんど影響を受けない
  • 感情移入しにくい
  • 科学的に厳密

 

Type1は直感的思考とも言われます。何か症状を訴えて患者さんが受診したときにパッと思いつく思考プロセスを指します。迅速性があり時間コストがかかりませんが、一方で診断エラーも起きやすいと言われています。

Type 2は分析的思考といわれます。例えば、AIUEOTIPSといったゴロやフローチャートを使って系統的に鑑別を考えたりすることを指します。時間はかかりますが、漏れなく検討できるため、診断エラーを起こしにくいとされています。

どちらが優れていて、どちらが劣っているわけではありませんが、それぞれをうまく使いこなすことが必要です。

Key Point !!
・臨床推論を行うときには2つの思考プロセスを意識する。
宇部興産中央病院 総合診療科
下川 純希
山口県岩国市出身。2015年山口大学卒(緊急医師確保対策枠)。初期研修を沖縄県で修了した後に山口県に戻り、当プログラム一期生として総合診療研修を修了。病院での家庭医療を実践を通じて、後進育成に取り組んでいる。好きな言葉は「なんくるないさー」
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