教育ログReflection Diary

意思決定支援

 今回は高齢者の意思決定支援について研修医の先生と話をする機会がありましたので、その枠組みを紹介したいと思います。

 86歳・女性。 6年前にアルツハイマー型認知症と診断されました。その後、認知症進行に伴い施設入所となりました。現在は日中のほとんどを車椅子で生活し、今年1年で2回ほど誤嚥性肺炎を繰り返しています。今回も誤嚥性肺炎の診断で入院となりました。これまで、ペースト食で食事をしていましたが、入院後でおこなった嚥下機能評価では、直接的に経口摂取するのは困難という評価でした。

 このような状況、臨床の現場ではよくありますよね。「口からものが食べなければその時!」と考える方もいれば、「これまで元気だったからもう少し生きていてほしい」と考える方もいます。本人に意向を確認しようにも認知症で意思決定能力は保たれていません。家族それぞれにも思いがあり、意見がすれ違うこともあります。価値観が多様化し、背景も複雑な患者さんの命に関わる意思決定は一筋縄にはいきません。

 こういった時に、私たちがよく使用する枠組みの一つに、臨床倫理の4分割表があります1)。具体的な使い方については、医学書院の川口篤志先生の記事が読みやすいので一読をおすすめします。

私たちが意思決定困難な事例を担当する時、研修医の先生と一緒にこの枠組みを使いながら方針を考えていきます。これまでみえてなかった視点が明らかになり、そこを補っていくと事例の全体像を見渡すことができていきます。全体像がわかれば、「この患者さんはここだよね」とある程度の方向性がみえてくることもあります。

医療が高度化、複雑化していく中で、より”選択する”ことが重要になってきています。私たち医療従事者は、難しい意思決定を適切に支援できる存在でありたいと思います。

Key Point !!
・意思決定が困難な事例では、臨床倫理の4分割表を使って情報収集をしてみましょう!
Reference
1) 川口篤志:モヤモヤよさらば!臨床倫理4分割カンファレンス, 週刊医学界新聞
宇部興産中央病院 総合診療科
下川 純希
山口県岩国市出身。2015年山口大学卒(緊急医師確保対策枠)。初期研修を沖縄県で修了した後に山口県に戻り、当プログラム一期生として総合診療研修を修了。病院での家庭医療を実践を通じて、後進育成に取り組んでいる。好きな言葉は「なんくるないさー」
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