教育ログReflection Diary

慢性咳嗽のアプローチ

 今回は慢性咳嗽の患者さんが来られたので、そのポイントをお話したいと思います。

 まず、咳嗽ですが、持続期間で急性咳嗽(3週間以内)・遷延性咳嗽(3〜8週間以内)・慢性咳嗽(8週間以上)の3つに分類されます1)。急性咳嗽の原因疾患は非常に多いですが、実臨床ではウイルス性上気道炎(感冒)が原因であることが多いです。遷延性咳嗽についても感染後の咳嗽が多くを占めます。

一方で、慢性咳嗽になると、非感染症が原因になることが多くなります。私たちは「慢性咳嗽のコモンな5大疾患」として下記を鑑別としてあげるように指導しています。

  1. 喫煙
  2. 後鼻漏症候群(postnasal drip syndrome)
  3. 上気道炎後の咳嗽(Postinfectious cough)
  4. 咳喘息(Cough variant asthma)
  5. 胃食道逆流症(GERD)

 これらの疾患はそれぞれ治療が異なるため, 病歴・身体所見から鑑別を絞る必要があります。例えば, 喫煙が原因なら禁煙ですし, GERDが原因ならPPIの処方を行います。病歴聴取に関しては、日本の咳嗽診療のガイドライン1)を参考にしています。版が一つ古いものですが、Webで一般公開されています(表1)。

疾患 特徴
咳喘息 夜間〜早朝の赤(特に眠れないほどの咳や起座呼吸), 症状の季節性・変動性
アトピー咳嗽 症状の季節性, 咽喉頭のイガイガ感や掻痒感, アレルギー疾患の合併(特に花粉症)
副鼻腔気管支症候群 慢性副鼻腔炎の既往・症状, 膿性痰の存在
胃食道逆流症 食道症状の存在, 会話時・食後・起床直後・上半身前屈時の悪化, 体重増加に伴う悪化, 亀背の存在
感冒後咳嗽 上気道炎が先行, 徐々にでも自然軽快傾向
ACE阻害薬による咳 服薬開始後の咳

 また、米国のガイドラインやヨーロッパのガイドラインもありますが、多少の疾患概念の違いはあるものの、方針は概ね似ています。まず日本のガイドラインに目を通したあとに、余裕があれば確認してみてくださいね。

 慢性咳嗽は一般外来で比較的よく遭遇する愁訴です。咳嗽=鎮咳薬の処方で経過観察ではなく、その原因疾患に迫れるようになりましょう。

Key Point !!
・咳嗽は持続期間で3つに分類する!
・慢性咳嗽のコモンな5大疾患を覚えましょう!
Reference
1) 日本呼吸器学会, 咳嗽に関するガイドライン第2版, 2012
2) Irwin RS et al. Classification of Cough as a Symptom in Adults and Management Algorithms. CHEST Guideline and Expert Panel Report. Chest 2018; 153:196-209.
3) Morice AH and ERS Task Force.The diagnosis and management of chronic cough. Eur Respir J 2004; 24: 481–492.
宇部興産中央病院 総合診療科
下川 純希
山口県岩国市出身。2015年山口大学卒(緊急医師確保対策枠)。初期研修を沖縄県で修了した後に山口県に戻り、当プログラム一期生として総合診療研修を修了。病院での家庭医療を実践を通じて、後進育成に取り組んでいる。好きな言葉は「なんくるないさー」
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