修了生からの声

2023年

山本優里
専攻医を終えて

 「専門じゃないので診られません」と言わずに何でも診られる医師になりたい。漠然とそう思っていた高校時代、今は亡き母が【総合診療医】という言葉を見つけてくれて、「これだ!」と思いました。それから15年が経ち、私は総合診療の研修を終えました。
 病気だけでなく人を診る、患者だけでなく家族も診る、それだけでなく地域も診る。総合診療医についての説明は、いつ聞いても、何度聞いてもしっくりきます。実際に研修を開始すると、まさにそれを実践する機会がたくさん訪れました。その都度指導医に相談し、総合診療に関する概念や枠組みを学びながら、時には多職種も巻き込んで、様々な事例をマネジメントすることができました。
 総合診療の研修では、ポートフォリオの作成を求められます。ポートフォリオとは、総合診療医に求められる能力を身につけていることを示すためのレポートのようなものです。ポートフォリオを書く過程で、指導医とディスカッションし、自己省察を繰り返すうちに、医師としてだけでなく人としても成長させていただきました。
 この4年間、多くの挫折も経験しました。しかし、指導医の先生方や多職種の皆様、そして家族の支えがあってこそ、乗り越えることができました。患者さんやそのご家族にも育てていただいたと感じています。関わってくれた皆様、本当にありがとうございました。
 次は自分が恩返しする番です。総合診療医として日々診療を行うのはもちろんのこと、総合診療の魅力を後輩たちへ伝え、山口県の総合診療を盛り上げていきたいと思います。

2021年

酒井加奈
 学生や初期研修医の方の中にも、何を専門にするか悩まれている方もいるのではないかと思います。私もすごく悩みました。しかし今4年間のプログラムを終えて、この選択は間違っていなかったと感じています。
 私が総合診療科を選んだきっかけは、初期臨床研修の時に、ロールモデルとなる総合内科医に出会い、臓器に限らず様々な疾患を診ることができる医師になりたいと思ったことでした。そして地元である山口県に貢献したいという思いがあり、総合内科やプライマリケアが勉強できる山口大学総合診療科の専攻医となりました。不明熱などの外来診療や、感染症治療、common diseaseの入院管理、重症患者の管理、小児診療など盛りだくさんの4年間でしたが、とても学びの多い日々でした。特に当プログラムは教育体制が充実しており、ポートフォリオ(家庭医専門医取得のため必要なレポート)について最初全く知識がなかった私に、丁寧に、根気強く、そして分かりやすく教えてくれた上司たちには本当に感謝しかありません。また、研修中に訪問診療の面白さも気づきました。患者さんの生活に寄り添った医療を多職種で協力してマネジメントすることはとてもやりがいがあると思いました。
 漠然と「自分育った山口県で総合内科が学びたい」という思いから当科を選択しましたが、この研修で家庭医としての自覚が芽生えました。これらかも頑張っていきたいと思います。

2020年

下川純希
 「総合診療医とはなんだろう?」研修を始めた当初、私は明確に答えることができませんでした。初期研修を総合診療のメッカといわれる沖縄で過ごしていた頃、「身近な問題をなんでも診る」という理想の医師像に近いのではないかと直感した領域が総合診療でした。タイミングよく、母校でプログラムが開始されることになり、一期生として飛び込む決意をしました。
 研修が進むにつれて、総合診療の奥深さに気づきました。年齢や臓器にとらわれずに幅広く診療ができるようになっただけでなく、その人全体をマネジメントする方法や、家族や地域の診方などもきちんとした理論に沿った形で学び、総合診療医として重要な技術も身につきました。さらに、組織運営や教育の側面での学びも多く、現場に必要な能力の幅が大きく広がりました。総合診療は自分が当初想像していた以上に幅広く、そして深い領域だったのです。
 また、臨床以外にも多くの機会をいただくことができました。例えば、日本プライマリケア連合学会の専攻医部会に所属し、学会事業に取り組みました。「若手医師のための家庭医療学冬期セミナー」では代表を務め、全国で活躍する同世代や著名な先生方との交流の機会を得ることができ、多くの刺激を受けました。海外短期研修としては3カ国(米国・英国・シンガポール)に訪問し、海外の総合診療の実際に肌で感じることができました。国際学会で発表させていただいたことも貴重な経験となりました。一期生という点で不安も多くありましたが、終わってみると他プログラムと比較してもたくさんの経験をさせていただき、研修開始前と比べて見えている世界が変わりました。支援してくださった方々には本当感謝しております。
 総合診療を選んで間違いはなかったと、研修を修了した今確信しています。これほど幅広く、奥深く、そしておもしろい領域は他にはないと思います。ぜひ、総合診療に足を踏み入れてみてください!